活動紹介

2021年04月08日

『電機連合@見える化通信』Vol.114

~少子化対策に逆行する児童手当の見直し~

『電機連合@見える化通信』Vol.114

~少子化対策に逆行する児童手当の見直し~

電機連合の活動の中に「産業政策・社会政策」
の取り組みがあることを知っていますか?
産業政策は電機産業や日本をより豊かに発展
させるため、社会政策は暮らしや生活をより
良くするための取り組みです。

私たちの周りには様々な問題があり、その中
には、個別企業労使の話し合いだけでは対応
しきれないものも多数存在します。

電機連合は働く者の立場から、自らに関係す
る課題について政策・提言をまとめ、政府や
省庁などと意見交換を行い、政策実現を目指
しています。

『電機連合@見える化通信』では、何となく
小難しくて見えづらい政策課題について、そ
の中身を少しずつご紹介していきます。

~少子化対策に逆行する児童手当の見直し~

一定所得以上の世帯は児童手当の特例給付を
廃止する児童手当法改正案が、現在会期中の
国会に提出されています。政府は新たな待機
児童対策への財源確保が厳しい中、児童手当
の縮小を決定しました。子育て世帯間で財源
をやりくりするのではなく、子育て支援の予
算を増やすべきです。

【現行制度と見直しの内容】
児童手当は中学校卒業までの子どもの養育者
に支給するもので、現行制度では子ども1人
に対して3歳未満が一律15,000円、3
歳以上小学校終了前までが一律10,000
円(第3子以降は15,000円)、中学生
が一律10,000円となっています。しか
し収入や扶養親族の数によって所得制限があ
り、専業主婦・子ども2人世帯で年収が96
0万円以上になると支給額が減額され、1人
につき一律5,000円の特例給付となりま
す。

今回の改正案では、この特例給付が見直しさ
れ、専業主婦・子ども2人世帯で年収が1,
200万円以上の場合は、月5,000円の
支給が2022年10月から廃止されます。そ
して手当の縮小によって捻出された財源37
0億円は、新たに必要となる約14万人分の待
機児童解消の受け皿整備に充てられる予定で
す。
なお検討の過程では所得制限の基準を、世帯
合算にすることも検討されました。中間所得
層にも影響の大きいこの案は世論の反発の高
まりを受けて見送られ、現行のまま収入の高
い方の親の年収で判断されます。

【法案の問題点】
今回の見直しは主に2つの問題があると考
えます。1点目は、児童手当は子どもの健
やかな成長に資することを目的に支給され
るものであるにも関わらず、今回の見直し
の影響で約61万人(全体の4%)の子ども
が受給の対象から外されてしまうこと。子
どもの最善の利益を考えれば、親の所得で
線引きせずにすべての子どもを対象とすべ
きです。高所得世帯にも支給が必要なのか
といった指摘がありますが、これに関して
は所得再分配機能のある税制(所得税や相
続税など累進課税※)での対応が適切です。
※累進課税:課税標準が増えるほどより高
い税率を課す方式
2点目の問題は待機児童対策の財源を捻出
するために、新たな予算措置をすることな
く、児童手当を縮小するという子育て世帯
間の負担の付け替えを行っている点です。
日本の子育て支援に対する国の予算規模は
十分ではなく、児童手当や保育所運営費を
含む家族関係社会支出の対GDP比はわず
か1・29%(2016年度)です。国民負
担率などの違いもあり、単純に比較はでき
ないものの、イギリスやスウェーデンなど
諸外国に比べて低いのが現状です(図表2)。
少子化が進む日本においては子育て支援に
関するさらなる予算の拡充を行い、その財
源で待機児童対策を行うことが求められま
す。

【子どもの育ちを社会全体で支援】
今回の児童手当の見直しは、子育てへの将
来不安から少子化をさらに加速させてしま
う懸念があります。子育て世帯を中心に世
論の反発は大きく、矢田議員のもとには4
8,000人を超える改正法案への反対署
名が寄せられました。少子化対策を進める
ために、今一度、すべての子どもの育ちを
社会全体で支援するという理念を、国民全
体で共有する必要があります。

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